確認済証や検査済証が無い場合に増築や用途変更の方法

連載シリーズ 【 確認済証や検査済証が無い場合に増築や用途変更の方法 】 第 2 話 / (全 6 話)

先日(平成26年5月17日)の記事、『違法建築と既存不適格 検査済証が無いと増築や用途変更はできないか?』で、

Q.検査済証が無くても増築や用途変更はできるか?

A.原則的にはできません。

と書きましたが、出来る可能性が出てきました。というのは、特別に建築基準法や関連法規が変わったわけではないのですが、平成26年7月2日に国土交通省より、

『検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合調査のためのガイドライン』なるものが発行されました。

これにより、下記のような建物でも、増築や用途変更ができる可能性が出てきました。

1. 検査済証がない建物(建築当時の建築基準法の技術的指針を遵守していること)

2. 確認済証がない建物(建築当時の建築基準法の技術的指針を遵守していること)

3. 確認済証取得時の図面が無い建物

今までだと1と3でも、木造2階建て200㎡未満の建物以外は、増築や用途変更が不可能2の場合だとすべて不可能と法的に解釈されていました。(建築基準法を棒読みすると、「出来ない」とは書いていませんが、出来るための条件を整えることが不可能と解釈されていた。)

ただ、この状況では、日本の既存建築ストックが有効活用されず、さらには耐震化なども進まないことから、1~3のような状況にある建物でも、「合法的に」増築・改築・大規模な修繕・大規模な改修が出来るようになりました。また、このように建物をいじる為だけではなく、「建築基準法適合調査」に合格することで「検査済証」があるのと同等と評価されることで、今まで金融機関が融資の判断基準にしていた検査済証の有無も変わってくると考えられます。

ただ、ここで注意しなければ、ならないことがあります。

① その建物が建てられた当時の法律に適合していること

② 今後は、違法増築等に対して厳しく対処してくると考えられること

この2点には注意が必要です。

特に②です。そもそも、検査済証が取得されていない建物は平成11年の段階で約50%あったと考えられています。その後、民間機関に確認申請業務が移行され、かなり改善されました。つまり、完了検査を受領しないことに対して、行政期間が甘かったという判断もできます。それにも関わらず、増築もダメ、大規模な修繕や模様替えもダメとも言いきれず、黙認していた観もあります。

しかし、このガイドラインが出てきたことによって、物理的には、検査済証が無くても、合法的に増築等が出来るようになったので、今後は違法増築等に対して、行政機関が黙認することもなくなってくると考えられます。

検査済証が無い場合であっても、確認申請済証や確認申請図面、構造計算書がある場合で確認申請図面通りに建物が建っている場合には比較的に容易に適合調査ができると考えられますが、確認申請図面が無い場合や確認申請図面通りに建物が建っていない場合などは、まずは現況図面の作成を行い、新築時の建築基準法の技術的指針に適合しているかのチェックが必要となります。

建物の図面というのは、建っていない建物の図面を作成するよりも、建っている建物の図面を復元する方がはるかに大変ですし、現在の法律に適合している図面を描くより、新築時の法律に適合しているかのチェックの方が大変です。

ですから、確認申請図面が無い場合には新築時並みの設計費用が掛かってしまうことにはなりますが、それにより、増築が可能になったり、財産価値が回復するのであれば、一考の余地があると考えられます。

 

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保証会社が滞納家賃を保証したら、家賃は滞納してないことになるか?

タイトルの件ですが、これは非常に難しい問題でしたが、ついに大阪高裁判決を最高裁が棄却したことで結論がでました。

Q.家賃滞納をしたことで保証会社が貸主に家賃を支払ってくれました。後日、家賃を保証会社に支払いましたが、貸主より、賃料未払いによる契約解除、明け渡しを求められました。保証会社が家賃を支払ってくれているし、それを保証会社に返したから、賃料未払いには該当しないのではないのでしょうか?

A.賃料未払いの事実は消えず、賃貸借契約の解除を認める。

賃借人の主張に理由はなく、保証会社による代理弁済があっても賃料等の不払いの事実は消えず、賃貸借契約の債務不履行の有無を判断するにあたり、保証会社の代位弁済の事実を考慮することは相当でない。よって賃料不払いに基づく賃貸借契約の解除を認める

大阪高裁2013年11月22日 2014年6月26日最高裁上告棄却

この判決は、不動産業界でも多少の波紋を呼ぶこととなりました。正直、私も驚きました。

この質問は、当社にもかなり来るのですが、これについては、弁護士に聞いても意見が分かれていました。考え方は二つあります。一つは、今回の大阪高裁の判決です。もう一つは

『保証会社に対して、契約時に保証料を支払っているのは、賃借人である場合が多く、とすると、保証会社は賃借人から、賃料未払い時に代位弁済を依頼されている訳だから、債務不履行は代位弁済によって解消される。』

という、借主側に立った意見もありました。たしかに、私も保証会社に保証料を支払っているのは賃借人なので、

「この意見の方が正しいのではないかな・・・。」

と、考えていました。ただ、そうなると、保証会社がいつまで、保証すれば良いのか?という問題も出てきますし、代位弁済をする期間(保証期間)を短くして、リスクを回避しつつ、家賃滞納が始まった瞬間に契約解除(立退き)にもっていくという、賃借人にも賃貸人にとっても良くない悪循環が始まります。

旧借地借家法もそうですが、賃借人有利のものが多く、今までの判例も圧倒的に賃借人有利の判例が多かったと思います。これは、日本の多くの土地が一部の地主によって占有されていた時代に弱者である賃借人を保護するためのものでした。しかし、ここにきて、「賃借人=弱者」という構図が解消されてきているものと考えられます。

ただ、今回の判例の一番のポイントは、

「保証会社による代理弁済があっても賃料等の不払いの事実は消えず」

という部分です。では、これが保証会社でなくて、連帯保証人ならどうなるかと言えば、やはり同じことになると考えられます。しかし、そうなると、ちょっと怖いことが起こる可能性があります。例えば、ある住居を大学生が借りていて、親が保証人になっていたとします。

「家賃が払えないから、お父さん、代わりに家賃を払って!」

と学生が父親に泣きつきました。

「しょうがないなぁ、今回はお父さんが払っておいてあげるよ。」

と、お父さんが自分の口座から、振り込んでしまいました。

その大学生は、普段から、ゴミの出し方が汚いとか、夜中に酔っ払って帰ってきたりして、貸主は心良く思っていませんでした。(もっと言うならば、生理的に受け付けなかったなどの理由かもしれません。)

そこで、貸主は、お父さん名義で振り込まれている事実をもってして、

「連帯保証人が支払ったことは代位弁済であり、賃料不払いの事実は消えない!」

と言って明け渡しを求めることができるということになりかねません。という訳で、もし、家賃が支払えなくて他人に泣きつくにしても、自分(借家人)名義で振り込んでもらうか、借家人以外に支払って貰った場合は、賃貸人に『賃料として受け取った』という、受領書を貰っておかないと、突然、立退きを迫られることになりかねないということになります。

今回の判決を勝ち取った弁護士は、これで明け渡しがやり易くなったかもしれませんが、今後は、賃料の支払い方等について、契約時にしっかりと説明をしてあげないと、本当の弱者を誰も守ってくれないことになるかもしれません。

心ある仲介業者の皆さんが多いことを祈ります。

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賃貸物件の所有者変更(オーナーチェンジ)の借主への通知

 

時々、質問をされるのですが、

「賃貸物件の所有者変更(オーナーチェンジ)をした場合、借主や連帯保証人の承諾を取る必要がありますか?」

という質問をうけます。解答は

「承諾を取る必要はありません。ただし、通知は出しておいた方が良いでしょう。」

となります。

以前、私がアセットマネージャーをやっていた時に、賃貸物件の売買の際に、同じ仕事に携わった地方銀行出身のアセットマネージャーが

「もし、賃借人に貸主変更を拒絶されて賃料の支払いを拒絶したり、連帯保証人が貸主変更を拒絶した場合に連帯保証人がいなくなると困るから、賃貸人と連帯保証人から承諾を取ろう」

と言いだしました。その賃貸物件、122世帯の賃貸マンションですから、その承諾を取っていたらいつになるやら・・・というような話です。しかし、実際には、賃借人や連帯保証人に所有者変更を拒絶する権利は有していません。

実際に判例もちゃんとあります。

大判昭和6年5月29日新聞329号18頁等(要旨)

賃貸不動産の所有者に変更があった場合、特約がない限り、賃借人・新所有者間に、従来の賃貸借関係がそのまま移転・存続する。

このことから、所有者が変わっても賃貸関係がそのまま新所有者に移るので、その賃貸関係を借主側が拒絶することは出来ないのです。

もっとも、地方銀行出身のアセットマネージャーは、私がこの判例をもって説明しても、納得していませんでした。まぁ、今まで自分がアセットマネージャーとして余程、自信があったのに、判例まで持ち出されて否定されたので悔しかったのだとは思います。ですから、私は、

「取引までの時間が無いから、今回は通知を出すだけにしよう」

と言って納得してもらいました。

この判例だけを見ると、通知すら出す必要性が無いように感じますが、法的には必要は無いのですが実務レベルで問題が発生します。

それは、借主が貸主の変更を知らないと、旧貸主に家賃を払い続けてしまうからです。

また、新貸主からだけの通知だと、新手の詐欺と思われてしまう可能性もあるので(実際にありました。)、少なくとも、新貸主と旧貸主の連名で、その通知を出します。さらに所有者変更になった登記情報か、新貸主、旧貸主の印鑑証明の複写を同封する方が良いでしょう。

貸主が変更になった物件の借主から、下記のような質問がありました。いずれも、新貸主より、

「今まで、家賃は手渡しだったのに、振り込みに変わった。振込手数料は借主負担と言われた。」

「ペット可ということで入居したのに、猫を飼っていることを理由に退去を迫られた。」

「飲食店可ということで、ラーメン店をやっているが物販店しか認めないと言われた。」

などという質問ですが、上記の判例の通りで、『従来の賃貸借関係がそのまま移転・存続する。』となるので、いずれも新貸主の主張は通らないことは、注意が必要です。

 

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消防設備(火災報知器等)の修理は貸主負担?借主負担?

連載シリーズ 【 消防設備(火災報知器等)の修理は貸主負担?借主負担? 】 第 5 話 / (全 6 話)

表題の件ですが、なぜか、やたらと多くの同様な問合せが来ます。また、同業者(宅建業者)からも同じ質問をされたりします。

回答は、当然ですが、貸主負担です。

建物が、使用もしくは存在を維持するために必要な物は、貸主負担となります。

つまり、表題の消防設備で、消防法で建物を使用するのに必要と定められたものは貸主負担となるのが原則です。

ただし、そもそも事務所だったところを店舗にするために必要になった消防設備等が個別にあるとすれば、それは貸主借主の協議となります。当然ですが、建築基準法で定める用途変更の費用なども協議となります。

さて、その他にも、消防法で定められたものだけではありません。例えば、非常用照明、防火扉、排煙窓など建築基準法で定められたものも、借主が故意に壊したのでなければ、貸主負担となります。

民法606条 賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。

そもそも、建物というのは、消防法や建築基準法に抵触するような状態で使用することは違法です。つまり、賃貸物を適法な状態に保つ義務は、民法606条からみて、貸主が負担することになります。

建築基準法第8条  建築物の所有者、管理者又は占有者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなければならない。

時々、この建築基準法第8条を持ち出して、借主(同法による『専有者』)にも責任があるのでは、ないかという方がいます。たしかに、これによって、建築基準法に抵触している状態で建物の使用を続けるということについて借主にも責任があると考えられます。つまり、借主は建物が法律に抵触するような状態にある場合には、直ちに貸主に報告し、貸主は適法な状態に修繕する義務を持っている訳です。また、壊れただけではなく、本来、法律的に付いていることが必要にも関わらず付いていない場合も貸主負担で付けなければなりません。

先にも書きましたが、これが借主によって違法状態にされたことに貸主が、気が付いた場合には直ちに借主に修繕させなければならないということになります。

この話ですが、ある宅建業者が私にこの様なことを言ってきました。

「トイレの電球が切れた場合は、通常、借主負担だよね。では、火災報知器だって、賃貸借期間中に壊れたら、借主負担じゃないの?」

これは、話が極端な事例なのですが、一般的にトイレの電球は、借主負担が一般的です。トイレの電球だって、民法606条の『賃貸物の使用及び収益に必要』な物であることは間違いないのですが、ここに至っては、トイレの電球は、明らかに借主の使用によって切れたものです。ところが、難しい問題が出てきます。

では、備付のエアコンや、給湯器の修理はどちらが負担するのか?という問題が出てきます。エアコンも給湯器も、いくら新品を付けていてもいつかは壊れます。もちろん、使用していたのは借主です。トイレの電球と同じでは・・・?という話になります。

そこで、この問題を解決するために、賃貸借契約書の特記事項に、

・ 備付の電球の交換は、借主の負担とする。

と書くことによって、その後の問題が起こらないようになるわけです。では、「備付設備の全ての修繕は借主負担とする。」と書いておけば、良いのではないか?ということになりますが、先にも書いたように、建築基準法や消防法に違反している部分について法的根拠があるので、このように書いた場合には、その条文、「備付設備の全ての修繕は借主負担とする。」の全てが無効となります。つまり、トイレの電球交換も貸主負担となってしまいます。

では、どこまでが、借主負担とできるのか、ということになりますが、賃貸住宅の場合には、通常の使用で壊れるものの中でも、一般的に借主が自分で(業者等を呼ばずに)交換できるものということになります。つまり、エアコンや給湯器は貸主負担となります。

これが、店舗や事務所となると、エアコンも給湯器も使用頻度も違うので、備付であっても借主負担と特記することはできます。住宅であっても、借主が後から備え付けたものは、特記事項に書かれていなくても借主負担です。

最近は、エアコン完備、照明器具完備なんていう賃貸住宅が増えてきたので、このようなトラブルが多くなっています。契約時に、壊れたら誰が負担するのかを、明確にしておきましょう。店舗や事務所の場合は、特に賃料も高くなる場合が多いと考えられます。トラブルが発生する前、できれば、物件を契約する前に、是非、一度、リデベにご相談ください。

店舗・事務所の不動産のご相談は、リデベにお電話ください。

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検査済証が無いと増築や用途変更はできないか?

連載シリーズ 【 検査済証が無いと増築や用途変更はできないか? 】 第 1 話 / (全 6 話)

今回は、当社に寄せられる質問の中でも非常に多い質問なので、ここに整理しておきたいと思います。

Q.検査済証が無くても増築や用途変更はできるか?

A.原則的にはできません。

※平成26年7月2日に国道交通省より

「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合調査のためのガイドライン」

が発行され、検査済証がなくても、増築や用途変更が出来る可能性が出てきました。

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詳細記事についてはこちらを参照ください。

『確認済証や検査済証が無い場合に増築や用途変更の方法』

平成26年8月5日追記

さて、ここで原則的に出来ないと書いたのですが、非常に困難な工程を乗り越えると、出来る場合もあります。それについては後述します。

よく、質問で頂くのですが、

「確認申請はあるのだが、検査済証がない。建蔽率(けんぺいりつ)や容積率はオーバーしてないのですが・・・」

というのがもっとも多い(くだり)です。

ここで、「違法建築」という言葉について書いておきます。

実は「違法建築」などという言葉は、建築基準法及びその関連法規には出てきません。つまり、「違法建築」などという、法律用語は原則的には存在しません。地域条例や、その他の全く関係のない法律に出てくる可能性はありますが、言葉の定義がなされているものは見たことがありません。

とすると、俗に言う「違法建築」とは、何を指すのかという疑問が生じます。これに、ついて私が国土交通省住宅局建築指導課に確認したことがあります。

「建築基準法及び、その関連法規(建築基準法施行令、建築基準法施工規則、建築士法)に抵触している建物及び、建てられようとしている建物(工事中の建物)」

という回答でした。

これについて、行政機関(市区町村など)に尋ねてみると、おかしな回答をする人がいます。

「検査済証が無い、即ち完了検査を受けてないというのは、手続き上の瑕疵であり、建築基準法及びその関連法規の技術的指針に即座に抵触しているとは、言えないので違法建築とまでは言いきれない。」

もっとも、この回答をした担当者は、私に論破されることになります。さて、私がどのように論破したかは置いておいて、『検査済証』が無いということが、既に建築基準法に抵触しているのです。

建築基準法第7条  

建築主は、第6条第一項の規定による工事を完了したときは、国土交通省令で定めるところにより、建築主事の検査を申請しなければならない。

2  前項の規定による申請は、第六条第一項の規定による工事が完了した日から四日以内に建築主事に到達するように、しなければならない。ただし、申請をしなかったことについて国土交通省令で定めるやむを得ない理由があるときは、この限りでない。

3  前項ただし書の場合における検査の申請は、その理由がやんだ日から四日以内に建築主事に到達するように、しなければならない。

4  建築主事が第一項の規定による申請を受理した場合においては、建築主事又はその委任を受けた当該市町村若しくは都道府県の職員(以下この章において「建築主事等」という。)は、その申請を受理した日から七日以内に、当該工事に係る建築物及びその敷地が建築基準関係規定に適合しているかどうかを検査しなければならない。

  建築主事等は、前項の規定による検査をした場合において、当該建築物及びその敷地が建築基準関係規定に適合していることを認めたときは、国土交通省令で定めるところにより、当該建築物の建築主に対して検査済証を交付しなければならない。

以上のことから、検査済証が無いということ自体が、建築基準法第7条に抵触していることになります。但し、ここで言う、「無い」のと「紛失した」のは、意味合いが全然違います。紛失した場合は、当該建物の所管行政庁に行き、確認申請等を受け付けてくれる部署に行き、台帳記録を見せてもらい、そこで検査済証が発行されていることが確認できたら、「台帳記載証明」を貰ってくることで、検査済証の代用となる場合もあります。

さらに、建蔽率や容積率がオーバーしていないというのは、直ちに建築基準法に違反していないということを示すものではありません。単に同法第52条と第53条が守られているということにすぎないのです。

では、検査済証が無いとどうして、増築や用途変更が受けられないかの法的根拠を示しておきます。

第6条  建築主は、第一号から第三号までに掲げる建築物を建築しようとする場合(増築しようとする場合においては、建築物が増築後において第一号から第三号までに掲げる規模のものとなる場合を含む。)、これらの建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする場合又は第四号に掲げる建築物を建築しようとする場合においては、当該工事に着手する前に、その計画が建築基準関係規定(この法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定(以下「建築基準法令の規定」という。)その他建築物の敷地、構造又は建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定で政令で定めるものをいう。以下同じ。)に適合するものであることについて、確認の申請書を提出して建築主事の確認を受け、確認済証の交付を受けなければならない。

以下、省略

と、何が書いてあるのか難しいので、簡単に整理をします。第一号~第四号という言葉はこの際無視してください。

建築主は、建築物を建築、大規模の修繕若しくは大規模の模様替えをする時には、その計画が建築基準関係規定(建築基準法及び関連法規)に適合するものであることについて、確認申請を提出して、建築主事の確認を受け、確認済証を受けなければならない。

ここで言う、建築物の建築というのも建築基準法に用語の定義がされており、

第2条  この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

十三  建築 建築物を新築し、増築し、改築し、又は移転することをいう。

この事から、増築は法律上、建築に該当するのです。そして、建築をする場合は、その計画が建築基準法関係規定に適合しなければならないことから、完了検査を受けていない(検査済証)がない建物は、同法第7条に適合していないので、増築ができないということになります。

また、用途変更に於いても結果的に同じことが言えるのですが、増築とは、建築基準法の法律根拠が違う場所にそのことが書かれています。

第87条  建築物の用途を変更して第6条第一項第一号の特殊建築物のいずれかとする場合(当該用途の変更が政令で指定する類似の用途相互間におけるものである場合を除く。)においては、同条(第三項及び第五項から第十二項までを除く。)、第6条の二(第三項から第八項までを除く。)、第6条の三(第一項第一号及び第二号の建築物に係る部分に限る。)、第7条第一項並びに第18条第一項から第三項まで及び第十二項から第十四項までの規定を準用する。この場合において、第7条第一項中「建築主事の検査を申請しなければならない」とあるのは、「建築主事に届け出なければならない」と読み替えるものとする。

これまた解りにくいのですが、用途変更に於いて、同法第6条の規定が準用されるので、確認申請を出さなければならず、増築で書いたこと同様に、用途変更ができないということになります。

※用途変更の場合は、通常の建築(新築)や増築と違い一部の地域(富山市等)を除き、完了検査を受ける必要はありません。但し、工事完了届は通常通り、提出しなければなりません。

では、全くできないかと言うと、方法が無い訳ではありません。同法第86条の7 既存建物に対する制限の緩和を利用します。

まず、検査済証が無いということは、完了検査を受けていないということなので、確認申請通りに建物が建てられているかどうかの行政機関によるチェックを受けていないということになります。

そこで、確認申請通りに建物が建てられているかの、チェックを建築士に依頼してやってもらわなければなりません。

この時に必要になるのが

・ すべての建物共通で、確認済証、確認申請時の設計図書一式

・ 木造で3階建て以上もしくは200㎡以上の場合には構造計算書

これがなければ、スタートすらできません。

この条件が揃ったとしても、確認申請通りに建てられてなければ、確認申請通りの建物に是正しなければなりません。(確認申請書通りに建てられていない建物の場合、ここで殆どの方が断念します。)

さらに、この仕事を引き受けてくれる建築士を探さなければならないという問題も発生します。もともと、建築基準法に抵触している建物ですから、それを行政に代わって、民間の建築士が、その責任において、それを証明するという仕事を受けたがらないからです。当社では、請け負ってはいますが、建物本体と必要書類一式を見させて頂いてからの判断となります。

また、増築や用途変更をする場合において、検査済証があったとしても、既存不適格があった場合、一部の既存不適格は現行法に合わせないと、増築や用途変更が出来ないことも注意が必要です。

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『確認済証や検査済証が無い場合に増築や用途変更の方法』

平成26年8月5日追記

 

 

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「賃貸住宅の消費税増税に伴う賃料の値上のお願い」の雛形無料ダウンロード

『賃貸住宅に対する消費税増税の対応』でも書きましたが、住宅の賃料に消費税を掛けることは、違法行為です。

消費税法第6条

国内において行われる資産の譲渡等のうち、別表第1に掲げるものには、消費税を課さない。

別表第1の13

住宅(人の居住の用に供する家屋又は家屋のうち人の居住の用に供する部分をいう。)の貸付け(当該貸付けに係る契約において人の居住の用に供することが明らかにされているものに限るものとし、一時的に使用させる場合その他の政令で定める場合を除く。)

住宅に含まれる範囲というのが、この他にも決まっています。詳細については、国税庁のホームページをご覧ください。

国税庁ホームページ『No.6226 住宅の貸付け

そのことから、『消費税にともなう賃料増額のお知らせ』というような、住宅の賃料に消費税が掛かることを連想させるような、通知を出すことは、禁止行為と考えて良いでしょう。

そこで、考えられるのが、『消費税増税による建物維持費等上昇による賃料値上げのお願い』というようなタイトルが正しいと考えられます。

もちろん、「お願い」の話にはなりますが、これは借地借家法で定められた正当な権利ですから、請求すること自体は違法行為にはなりません。ただし、請求しても、借主が拒絶することも正当な権利となることは注意してください。

借地借家法第32条

建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。

さて、借主となんとか話がまとまったとしても、お知らせだけでは当然に不十分です。

特に、消費税増税が直接的な原因での賃料値上げではなく、消費税増税による維持管理費等の上昇による間接的な要因となりますので、賃貸借契約そのものが一部変更になるので、賃貸借契約書を再締結するか、合意書を作成する必要性があります。

そこで、「合意書」の雛形も併せてダウロードできるようにしてありますので、併せてご利用ください。

 

『消費税増税による建物維持費等上昇による賃料値上げのお願い』の無料雛形ダウンロード(Word形式・Zipファイル)はこちらから

※下記の各項目を記入の上、『今すぐダウンロードする』をクリックして下さい。(必須項目が入力されていないとダウンロードされません。)

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賃貸住宅に対する消費税増税の対応

連載シリーズ 【 賃貸住宅に対する消費税増税の対応 】 第 3 話 / (全 4 話)

そもそも、住宅は課税対象にはなりません。

その為、賃貸住宅の場合、消費税が増税になったからと言って、それだけを理由に賃料を上げるということはおかしな話になります。

貸主が宅建業者ではなく、かつ貸主本人から、それを告知するのであれば、特段と罪になることはないです。(借主が消費者庁あたりに、文句を言えば、何らかの注意を受ける可能性はあります。)しかし、当然ですが、課税対象ではないので、借主に拒絶、もしくは無視されても、何ら文句を言うことはできません。

では、貸主が宅建業者であり、貸主から告知する場合や、貸主がそれを仲介業者や管理会社(管理会社が宅建業者だった場合)は、違法行為となります。

なんの法律に抵触するかというと、宅建業法第47条に抵触します。

第四十七条  宅地建物取引業者は、その業務に関して、宅地建物取引業者の相手方等に対し、次に掲げる行為をしてはならない。

  宅地若しくは建物の売買、交換若しくは賃借の契約の締結について勧誘をするに際し、又はその契約の申込みの撤回若しくは解除若しくは宅地建物取引業に関する取引により生じた債権の行使を妨げるため、次のいずれかに該当する事項について、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為

この『故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為』の部分に抵触するのです。

先に書いた通り、住宅の賃料は消費税の課税対象外です。それにも関わらず、借主に、あたかも住宅の賃料に消費税が課税対象であることを告げる行為は、『故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為』となります。

仮に、その仲介業者が、『住宅の賃料は課税対象外』ということを知らなければ『故意に事実を告げず』の部分には対象とはならない可能性はありますが、一般的には

「そんなことも知らずに、宅建業者をやっていたのか!」

と判断されるでしょうし、知っていたかどうかは別としても『不実のことを告げる行為』に対して、言い訳はできません。

しかし、貸主側の気持ちも解らなくはありません。

そもそも、住宅の賃料が課税対象外であっても、賃貸住宅の維持管理費は、課税対象ですから、建物所有者である貸主は、その賃貸住宅の維持管理費において、消費税は払うけど、貰うところがないという矛盾したことが発生します。さらに言うならば、住宅を購入する際には、建物代には消費税は税対象ですし、その建物の維持管理も所有者が消費税は課税されます。

このことから、借主に、「消費税が増税になったことにより、維持管理費が上がったので賃料を値上げしたい」という旨を正直に伝えるべきでしょう。

これは私見になりますが、私は賃貸住宅の所有者保護のことを消費税増税の際に考えておくべきだったと考えています。

消費税増税の際にもっとも懸念されていたことは、消費税増税は経済的弱者を苦しめるということでした。その観点からも「貸主と借主では、借主は一般的に経済的弱者」という判断をしたのだろうことが想像されます。それは、一部の考え方において事実なのですが、現在の賃貸住宅というのは、投資目的で所有している割合が非常に増えています。もちろん、地主が持っているものも依然として多いのも理解しています。

しかし、現在の消費税率について、私は以下の理由から上げざるを得ないと考えています。

① 社会保障費などが高齢化社会にともない増えていくこと

② 日本経済を相対的に守るべく法人税率を引き下げること

③ 所得税に関しても、富裕層が資産管理会社化することや、海外移住などをされた場合、対処が難しいことから所得税も諸外国以上には、上げにくいこと

④ 諸外国の消費税率が日本よりも高い国(特に先進国)が多いこと

以上のことから、消費税は上がっていくと考えています。

この場合、日本の住宅に関する賃料の考え方、特に敷金に関する法律を考えてみると、

『通常の生活を行っていて、損耗したものについては、賃料の範囲に含まれるから、その修繕費用を敷金で負担させてはならない』

と、なっています。とすれば、建物の維持管理費や共益費が、消費税の課税対象に含まれなければ話は矛盾してきます。

もし、この状態を放置して、消費税を上げていくと考えます。

よく、分譲マンションや、分譲戸建て住宅の販売の際に、現在、支払っている家賃と住宅ローンの比較が出てきます。

ところが、消費税が増税していくと、分譲マンションや分譲戸建て住宅の販売は、常に消費税分のハンデを背負うことになります。これから建てる新築の賃貸マンションやアパートは、その分、最初から家賃に上乗せすればという稚拙な意見もあります。家賃というのは、掛かった原価で決まるものではなく、周辺相場で決まるものです。このことから、新築の賃貸マンションへの投資は減り、さらに分譲マンションや分譲戸建ても減っていきます。これは、日本経済にとって決して良いことではありません。

もちろん、借主に私の私見を展開してもご理解してもらうことは出来ないということは、よく解っています。人間と言うのは、原則として社会よりも個人を大切にする傾向にあります。

そのことからも、賃貸住宅に於いて、今回の消費税増税に伴う、賃料の値上げに関して、借主には、住環境維持のために協力を願いたいということを説明するべきだと私は考えています。

私も賃貸住宅に住んでいます。ちょっと古いですが、非常に住環境の良い賃貸マンションです。私の住んでいるマンションが、家族のためにもいつまでも良い住環境を維持するために貸主と一緒に考えていくべきだと思います。借主も住環境維持を何か考えるべきだと思います。

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まず、消費税増税に伴って、賃料の値上げが出来るかどうかについては、『消費税増税で賃料は値上げできるのか?』に書いていますので、そちらを参照ください。

さて、重要なのは、「消費税増税に伴う賃料値上げのお知らせ」を出したからと言って、条件によっては、借主が応じない可能性も十分にありますが、応じてくれた場合に、「消費税増税に伴う賃料値上げのお知らせ」だけでは不十分ということです。

そこで、「消費税増税に伴う賃料値上げに関する合意書」も一緒にご用意しましたので、そちらも併せてご利用ください。

「消費税増税に伴う賃料値上げのお知らせ」に相手が合意し、その件について、本契約書そのものを書き換えるのであれば「合意書」の必要性はありませんが、本契約書を書き換えないのであれば「合意書」を締結しておかないと不十分ということになります。

 

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消費税増税で賃料は値上げできるのか?

連載シリーズ 【 消費税増税で賃料は値上げできるのか? 】 第 1 話 / (全 4 話)

さて、ブログの更新が出来ない間に、消費税が増税になってしまいました。

3月までに非常にお電話で多くのお問合せを頂いていたので、本当はブログに整理して書いておきたかったのですが、できませんでした。

さて、今更ながら、家賃に掛かる消費税について書いておきます。

まず、増税の有無に関わらず、消費税の掛かるものと掛からないものについて書いておきます。

課税対象

・住宅以外の建物(土地も一緒に借りている場合は土地の賃料と建物の賃料を合算)

・駐車場

非課税対象

・住宅

・土地だけを借りている場合(借地)

となりますので、平成26年の消費税増税であっても、賃貸アパートや賃貸マンションなどの賃貸住宅でも非課税です。ここで、ポイントなのは、既に賃貸住宅を借りているのに、消費税を徴収されている方がいるとすれば問題です。もし、そういう方がいるとすれば消費税法について、

ます、課税対象の住宅以外のものについて、今回の消費税増税によって非課税になる場合があるので、それについて書いておきます。下記の3つの条件がすべて揃うと増税対象にはなりません。

1.平成25年9月30日までに賃貸借契約が締結されていること

2.有期契約であること

3.税込み賃料で契約していること

例えば、月105,000円(税込)で契約しており、消費税を除く賃料が明記されていない場合

4.貸主が個人などの、非課税業者の場合

5.賃料を貸主側から変更できない文言が契約書に入っていること

となります。

1~4については、よくある事なのですが、5については、まずないでしょう。

5の様なケースが存在するのかを国税庁に問い合わせてみたところ、行政との賃貸借契約の場合にはあり得るそうです。(実際には、その様な契約書は見たことがありません。)

つまり、消費位税増税が影響でない、非住宅系の賃貸借契約は、殆どないと言うことになります。

ここで、問題になるのは3のケースです。

3のケースの事例で考えた場合

月額賃料 金105,000円(税込・賃料100,000円/月・消費税5,000円/月)

と、契約書に明記されていれば、借主は、消費税納税分は支払わなければなりません。問題は、消費税を除く賃料が明記されておらず、また消費税も明記されていない場合、

『税込で契約しているのだから、消費税が上がろうが、賃料は同じでいいだろう』

という解釈もできなくはありません。当然、契約書には貸主から賃料が上げられる旨が記載されているので、

『消費税増税にともない賃料を月額108,000円にします。』

と貸主が言うのですが、上記の解釈から、借主がこれを拒絶できるのではないかという疑問がでてくるはずです。

そこで、この点についても国税庁に問合せをしてみました。

「貸主と借主で、話し合ってもらうしかないですね。」

何とも、歯切れの悪い回答が、帰ってきました。

つまり、

税込賃料だけで、消費税額が明記されていない契約の場合、貸主は消費税納税にともなう、賃料の値上げ依頼はできるが、借主も拒絶することもできる。

ということになります。

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既存不適格と違法建築 正しい建築士に仕事を依頼していますか?

最近、設計者である建築士の到底、正しい選択とは考えられないで起こったと考えられるような事態で、私のところに質問がいくつかありました。

色々な事態があるので、一つ一つの事例は、別の記事で書きますが、決定的な問題は、その物件の設計者である建築士、もしくは請負った施工会社の責任で起こったと考えられることが殆どです。時には、地域行政(市町村や特別区)の建築指導課(建築課建築指導係)などの、誤った指導による事件もありました。

私は、一級建築士になって既に15年以上が経ちました。まだ、建設省が存在したころに一級建築士になったのですが、私が一級建築士になるために勉強をしていた時に、私よりも二回り以上も先輩の建築士に

「建築士を取得して、初めて建築を行うスタートラインに立てる。」

と、言われたことがありました。

今では、私にはその意味がよく解ります。私も一級建築士になったばかりの頃は、これで自分は建築業界の最も必要な資格を取得したと思ったものでした。

しかし、実際には、例えて言うならば、

『教習所を出て、車の免許証が交付されただけ』

に過ぎなかったのです。しかし、それを自覚するのに、そんなに時間を要さなかったのが私の救いでした。

但し、ベテランの建築士だから、正しい選択ができるという訳でもないのですが、とすると、なかなか、どの建築士、もしくは施工会社に依頼して良いのか解りません。

私が、不動産会社(デベロッパー)として、ある大手設計事務所の一級建築士に、収益物件とするための商業施設の仕事を依頼したことがありました。その一級建築士は私に二つの案を提示してきました。二つの案を提示してきたこと自体には問題はありませんでしたが、私は

「プロに依頼をしているのだから、そのどちらのデザインでも私は構わない。赤でも、青でも好きにすればいい。私が依頼したことは、『収益性の為に計画よりも賃貸面積を減らさないこと。』、『その建物を利用する人が笑って安全に使えること』『その建物を作る人の安全が保たれること』この3点だけである。」

と言いました。その後、その建築士はそれを守ってくれました。その建築士は、私が会った、私より若い建築士の中では、今でも一、二を争う建築士だと考えています。それは、その建築士が、『建築士が何をしなければならないか』を私の一言ですぐに判断できたからです。

我々、建築士もしくは建築士を持っていなくても設計事務所に所属する多くの設計者が、何らかの学校(大学や専門学校)で勉強をしてきています。『建築家』を目指して・・・。そして、その多くが著名な建築家に憧れて、デザインの勉強をしたりします。中には、著名な建築家の建物を見ることで勉強をした気分になっている者も大勢います。

著名な建築家に憧れることも、その建物を見ること自体は否定しません。しかし、それを自分のクライアントに活かすことは、殆どありません。著名な建築家の話よりも、はるかに重要なことがあることに、多くの建築士は見逃しているのです。

その『建築家』を目指した多くの学生が、社会に出て、建築士の必要性があることに気が付きます。特に多くの人は、3つある建築士の中でも『一級建築士』を目指すことになります。

3つの建築士について簡単に違いを簡単に書いておきます。

一級建築士・・・公共建築物や百貨店で500㎡を超える建物、木造で最高高さが13mを超える建物、木造以外の建物で300㎡を超え最高高さが13mを超える建物、1000㎡を超える2階建て以上の建物。(一部略・建築士法第3条第1項)

二級建築士・・・一級建築士が出来る建物以外では、30㎡以上、もしくは木造以外の建物で100㎡以上(木造は300㎡以上)もしくは3階建て以上の建物(一部略・建築士法第3条第2項)

木造建築士・・・一級建築士もしくは二級建築士が出来る建物以外で木造の100㎡を超える建物(一部略・建築士法第3条第3項)

一級建築士の試験とは、年によって違いますが、概ね合格率が7%ぐらいの試験です。しかも、宅地建物取引主任者試験などと違って、誰でもが受けられる試験ではありません。例えば、大学で建築を学んで、一級建築士事務所で2年の実務を積んでやっと受けられます。その人同士で受ける訳です。プロ同士で受けて7%だから、かなりの狭き門です。過去の資格保有者は2014年現在で約35万人ですが、実際に現在でも実務についている一級建築士は7万人です。この数は医師の三分の一、弁護士の約二倍に相当します。

ここで建築士の試験を勉強しだすに当たり、多くの建築士が大事なことを忘れ、技術的な勉強や試験の為の知識を詰め込み始めます。つまり、そもそも、建築士が何故必要かと言うことを忘れてしまっているのです。

そこで、正しい建築士の見極め方の一つをここに書いておきます。

依頼した建築士に次の質問をしてみてください。

「建築基準法第1条と建築士法第2条2項を答えてください。」

と・・・

建築基準法第1条

この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低限の基準を定めて、『国民の生命、健康及び財産の保護を図り』、もって公共の福祉の増進を資することを目的とする。

建築士法第2条2項

建築士は、常に品格を保持し、『業務に関する法令及び実務に精通して』、建築物の質の向上に寄与するように、公正かつ誠実にその業務を行わなければならない。

一字一句間違えずに答える必要性はありませんが、『』内の部分が答えられなければ、その建築士は、建築士としての本分を忘れた建築士であり、これを答えられなかった建築士に依頼した読者は、私に質問をしなければならなくなるかもしれません。

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