【開発】L字溝 第10話 最終回
前回から、この話題がだいぶ空いてしまいましたが、今回が最終回になります。
前回以前の話はこちらからどうぞ。
【開発】L字溝 第1話
【開発】L字溝 第2話
【開発】L字溝 第3話
【開発】L字溝 第4話
【開発】L字溝 第5話
【開発】L字溝 第6話
【開発】L字溝 第7話
【開発】L字溝 第8話
【開発】L字溝 第9話
さて、私は隣地の買収などできるわけが無いこともわかっていて、また、お店のオープンまでに間に合わせないといけないという、厳しい状況に追い込まれていました。
そこで、いろいろ考えて、前回の話の通り、電柱が必要で電柱は道路上に立てることができるのなら・・・
ということで擁壁をL字溝で押し通すことにしました。
さて、すぐに役所に行くと、隣地となにも交渉してないと思われるので、1週間空けてから、再びS区役所の道路課に行くことにしました。
S区役所のすぐそばの喫茶店で設計のM氏と現場監督のY氏と待ち合わせました。
緑字・・・M氏 赤字・・・Y氏
「相澤さん、いくらなんでも高さが1mの擁壁ですよ・・・。それをL字溝だって言うわけですよね。無理だと思いますよ・・・」
「僕も無理だと思います。」
「正直言えば、言おうとしていることが強引だということは解ってるけど、隣地が買収できなかった以上、何もしなければ、隣地の土はこちらの道路に流れてくる。我々も困るが、隣地も困る。これを放置することはS区としても難しい話だ。しかし、道路上に何かを置くということをS区としても認めるわけにはいかない。そこで、道路上に置いて良い物という大義名分をS区に与えてあげれば、S区も認めるのではないかと・・・」
「まぁ・・・他に代案もないので・・・とりあえず・・・」
「あっ、途中で口を挟むなよ。」
さて、S区の道路課に突入です。
「すいませ~ん。」
「あっ、また君たちか・・・。隣地との交渉は上手くいった?」
「いえ・・・それがまったくダメでして・・・」
「そりゃ、困ったな。」
「そこで、ご相談があるんですが・・・」
「なんだ?」
「今回の擁壁をL字溝ということで認めてもらえませんか?」
「はっ?きみ・・・L字溝ってどんなものか知ってる?」
「一般的なものは知っているつもりです。」
「一応、解らないといけないから教えてあげとこうか?こういうもんだよ!」
と写真を見せられました。一応、途中から読んでいる方の為に写真を載せると・・・
これがL字溝です。
「はい。存じております。しかし、S区としてはL字溝は道路幅員内にあることは認めますよね?」
「そりゃ、『L・字・溝』ならばね」
「では、お伺いします。L字溝の定義を教えて下さい。」
「あのなぁ・・・L字溝っていうのは道路上の雨水を排水溝に流す為のものだ。断面がL字になっているものだぞ」
「今回の我々の擁壁も下に排水溝は設けてますし、断面も一応、L字です。」
「大きさが全然違うだろ!」
「では、L字溝というのは、建築基準法で大きさが定められているわけですか?」
※JIS規格ではもちろん定められています。しかし、JIS規格の製品を使うことを建築基準法では定めていないはずです。
「それは屁理屈だろ!」
「もちろん、屁理屈なのは解っています。しかし、他に何か案がありますかね?もし、あればお知恵を拝借したいのですが・・・」
「ちょっと、待ってろ!」
と、担当官は上司と思われる人としばらく話していました。
待つこと15分ほどして・・・
「今回だけだぞ!!!!!!」
「あのぉ・・・。S区が承認したという書面をいただけませんか?」
「無理だよ!図々しいにも程があると思わないか!?」
「ですよね。わかりました。」
さすがにS区の立場を考えるとそれは無理だということはわかりました。
というわけで、作ったL字溝ならぬ擁壁は・・・
こちらです。
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写真右側の、ライトが埋め込まれている塀が私が『L字溝』と言ったものです。この塀の下にグレーチングが写っているのを見れば解るとおり、雨水の処理能力もちゃんとあります。(ゲリラ豪雨であふれたけど・・・)
奥のバイクを見れば解るとおり、高さも結構あります。ちなみに一番に奥に写っている階段もついでにL字溝ということにしてもらいました。断面が全然L字じゃないけど・・・。
その後、私はS区の道路課から
「もう、うちの敷居はまたがないでくれ!」
と、出入り禁止にされてしまいました。
長々と書いて、くだらないオチだったけど・・・
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