【違法建築】~『時効』ですよ!~
さて、前回はちょっと、まじめなことも考えているということをアピールしてみたんですが、読者のみなさんの期待に沿えてなさそうなので、今日も2回目の更新をしてみます。
みなさんは違法建築と聞いてどんな物を想像しますか?
まぁ、最近は姉歯建築士やヒューザーで有名になった、耐震偽装を思いつく方が多いかと思います。
しかし、この世の中には違法建築物だらけなんです。
統計は取っていませんが経験則的に見ると
1位 違法増築
2位 検査済み証無取得
3位 用途違反(飲食店をやってはいけない場所でやっている・・・等)
などが多いでしょうか・・・
特に、違法増築はそこら中にあります。ちょっと、古い街中の雑居ビルの屋上を見てみてください。屋上にそのビルとはどう見てもにつかわしくない建物が乗っていることがありませんか?その殆どが違法建築です。
※防火地域以外の場所では10㎡未満の増築は一定条件下で無許可で出来ます。
不動産売買の仕事をしているとこの違法建築によく当ります。住宅情報館の質問にも多く寄せられています。
今回はそんな違法建築の話です。
まだ、景気が良かった6年ぐらい前、大手不動産仲介会社N氏から電話です。
(N氏についてはこちら
を参照してください。)
この頃のN氏はそこそこ経験を積んでかなり色々なことが解るようになっています。もちろん、この時には宅地建物取引主任になっていました。
「相澤さん、品川区に良い物件があるんですよ~。」
間髪いれずに
「山手線○○駅徒歩5分の6階建ての賃貸マンションなんですけど、総戸数は1DKが46戸2LDKが6戸、空室は3戸です。現況利回りはNETで14%、満室なら15%を超えます。家賃は周辺相場と比較してもかなり安いです。だから、家賃の下落リスクは低いです。」
※当時はまだ利回り5%以下での収益物件の取引なんてほとんどありません。東京都心部で5%以下の利回りで収益不動産が取引されるようになるのにはここから2年ぐらいの時間がかかります。
物件を入手した後に景気が悪くなったりして家賃が下がると物件の価値が下がります。N氏はそれを言いたいわけです。
「個人の方が所有で昭和57年築です。」
ここでN氏のテンションが下がったのは建物が古かったからでしょう。
「ん?昭和57年か~。微妙に旧耐震だったりする?」
(※旧耐震・・・新耐震基準は昭和56年6月1日に施行されたものです。昭和56年6月1日以降に確認申請が取得されている物件(もちろん、その確認申請に基づいて完了検査が行われていること)については、新耐震基準を満たしていることになります。)
今回の物件は完成が昭和57年ということは、確認申請が昭和56年6月1日より前の可能性があります。
「う~ん。謄本には昭和57年11月新築と書いてあるので大丈夫じゃないっすか?」
「そっか~。6階建てなら施工に1年は掛からないだろうから、新耐震かな・・・」
「ですよね~。最近、僕もいろんなことがわかる様になってきたんっすよ!」
「一応、検済のコピー取り寄せてくれる?」
「あっ、そこなんですけどね、この建物、検済を取得してないんですよ!」
「げっ・・・」
「確認はあるんですけどねぇ・・・」
(※確認・・・確認申請済証のこと。建物は原則として確認申請をしないと建てられません。ただし、一定条件下では必要がありません。詳しくはこちら・・・『建築確認申請』Wikipedia
)
(※検済・・・検査済証のこと。確認申請に基づいて、ちゃんと建物が建てられているかを行政機関(最近では民間の建築検査機関でも行われています。)が竣工時に検査し、その検査内容に問題がなければ発行される証書です。)
「図面はある?」
「ありますよ!メールしまっしょっか?」
「うん。とりあえず、物件概要と図面をメールして。」
N氏は仕事が速いです。N氏が知識をカバーしてここまで来たのはこのスピードです。
物件概要と図面のPDFが1分で来ました・・・速いです。
こうなることをちゃんと考えて電話しながら、メールを用意していたに違いありません。
さて、PDFを開いてみると・・・
物件概要に地図、公図、謄本、それに設計事務所の書いた図面、建築確認申請(受領印付き)があります。
物件概要はN氏が電話で言った通りのことが書いてありました。謄本を確認すると物件概要と相違ありません。というわけで早速、図面の確認をすると・・・N氏の決定的なミスに気が付きました。
すぐにN氏に電話します。
「お~い、6階の図面が添付されてないぞ!」
「いや、6階の図面がないんですよ。」
「なんで!!!」
「確認見ました?」
(ん?)
建築確認申請というファイルを開くと・・・
『5階建てで申請してるっ・・・・』
「あのさぁ、これ、新耐震も旧耐震もないじゃん!普通に違法建築だろ!」
「あっ、でも昭和57年築ですから、もう築20年以上ですよね。」
「だから、なんだよ」
「時効ですよ、じ・こ・う!」
「へ?」
「だって、殺人だって15年で時効ですよ!違法建築も20年経てば時効でしょ。」
※当時は殺人事件の場合の時効は15年でした。
(絶句・・・)
この後、私がN氏に向かって時効について、長々と説教したのは言うまでもありません。
※違法建築に時効はありません。時効というのは犯罪の証拠が時間とともに立証が難しくなるから存在するのですが、違法建築は建物が無くならない限り、その立証はできますから・・・。
「洗面所の電気が点かないのよ!」
私は不動産屋でもありますが、そもそもは建築屋です。しかも、住宅の専門家です。
というわけで、今日は住宅の仕事をしていた時の話です。
住宅業界というのはそもそもクレーム産業です。建物というのは自動車やパソコンの様に工場で画一されたものを大量生産をしているわけではありません。個々の部品は工場生産でも、それを組み立てるのは現場で作ります。
故にどうしても、クレームが発生します。その代表が雨漏りです。『8時だョ!全員集合』(古っ!)のコントの様な大雨の日に、家中に洗面器や鍋を置いてしずくを受けるという雨漏りはありませんが、ちょっと壁紙にシミができるという様な雨漏りは日常茶飯事です。
経験的に言うと15軒に1軒ぐらいの割合でありました。まじめにやっていても、クレームというのはなかなかなくなりません。だから、その対応を丁寧にすることが大事です。
今回は雨漏りではなく、電燈の話です。
私の席の電話が鳴りました。出ると、アフターメンテナンス部のクレーム担当Sです。
「おう、相澤か?あのさぁ、A団地って設計したの相澤だろ?相澤の設計したA団地3号棟の方から、洗面所のダウンライトの電気が点かないというクレームなんだけど、思い当たる節はある?」
A団地はたしかに私が3年ほど前に設計した団地です。しかし、その方が入居されてから、もう2年以上は経っていました。
「う~ん、ちょっと図面を見てから折り返すよ。」
と応えて電話を切り、図面を引き出してきました。その頃の私は年間に何十棟も設計してますから、3年も前に設計した建物の配線系統まではまったく覚えていません。
図面を見ると、トイレや浴室と系統は一緒です。
(あれ?洗面所だけなのかぁ?そもそも洗面台に付いてる電燈は点くのかな?)
などと、考えていると、またSから電話です。
「相澤さぁ、まだ解らないの?A団地3号棟の方から、なんとかしてくれって何度も電話があるんだよね!この方、結構ヒステリックなんだよ!」
「あのさぁ・・・洗面所のダウンライト以外に点かない場所はないのかなぁ?」
「いや、洗面所のダウンライトだけだって言ってるぞ」
私はひらめきました。
「あのさぁ、電球1個を持ってA団地の3号棟にいってくれる?」
「へ?どこが悪いの」
「たぶん、電球を換えれば直ると思う。」
Sも解ったみたいでした。
「球切れか・・・?」
Sが行くとやっぱりそうでした。
A団地3号棟の方はSに向かって言ったそうです。
「おたくはたった2年で切れる電球を使っているのっ!」
(まだ、LED電球が登場する10年も前の話です。)
中にはこういうお客さんもいます。
仲介業者(ブローカー)
本日、二度目の更新です。
いつも、昔話ばかりを書いています。そもそもは『Dr.相澤の住宅情報館』
の更新をなぜ怠っていたかということを書き始めたことから、昔話ばかりになってしまいました。
あまり、昔話ばかり書いても仕方ないので今日は最近あったことを書きます。
久しく連絡の無かった不動産会社Bの担当者Gから連絡がありました。
「相澤さん、お忙しいですか?ちょっとお願いがありまして・・・。」
「どんなお願い?」
口調からしてロクなお願いではなさそうです。
「実はある物件の購入をうちのお客さんが検討してくれていたんです。その物件の情報は不動産屋1というところからの情報なんです。それで、うちのお客さんはその物件の購入申込書を用意したんです。不動産屋1は物元じゃないみたいなんですよ。とりあえず、購入申込書を不動産屋1に渡そうとしたら・・・突然、不動産会社1と連絡が取れなくなっちゃったんです。相澤さんのお力でなんとか、この物件繋がりませんかね?」
不動産屋以外の方にはよく解らない話です。
しかし、この先にGが何を言いたいかを悟った私はいつになく冷たいです。
「謄本とって、売主のところに行ってきたら?」
「いや~、不動産屋1の先に物元がいるわけですし、もし不動産屋1と物元の間に別のブローカーがいたりすると・・・。もし、そのブローカーや物元がうちの会社と仲の良い会社だと山越しと思われかねないから、売主に直接会いに行けないんですよ。」
不動産屋以外の方にとっては尚更解りにくい話になっていると思います。
「じゃあ、諦めれば?」
「いやいや、買主さんから、購入申込までもらっちゃったんですよ!。今更、売主どころか物元にも繋がらないなんて言えないですよ!うちの会社の面子が・・・助けてください」
(こうなるだろうなぁ・・・と思ったから冷たかったんだよ!)
と言いたいところを抑えて・・・
「わかった、わかった、じゃあ私が売主のところに行ってくるよ。」
とここまでの話が解り難いと思うので絵にしてみました。
と、こんな感じです。
今回のGは左から二番目の客付け業者で不動産会社Bの社員です。
買主は購入申込書を出そうとした。
不動産屋1から情報が不動産屋Bに行くわけですが不動産屋1と連絡がつかなくなった。
『そんなことあるの?』と思われる方が多いと思います。
これがよくあることなんです。上の図の不動産屋1,2,3のことを不動産業界ではブローカーと言います。そもそもの意味から言えば仲介業者はみんなブローカーなんですが、『自分では物元も客付けもしないで不動産屋に情報を流すだけの業者』のことをブローカーと言っています。ところが、この人たちは出所のはっきりしないまま情報を流すだけなので、売主に辿り着けなくなることがあります。
そして、不動産屋Bが売主のところに直接行った場合、不動産屋2,3、Aが仲の良い会社で山越になっても困る。売主は謄本で解っているが不動産屋2,3、Aが解らない。不動産屋1も自分が山越されることを警戒しているので不動産屋A、2,3のことはなかなか教えてくれません。
(山越・・・紹介して貰った不動産屋を通さないで直接、売主のところに行くこと。買主が直接行けば、仲介手数料を払わなくて済むし、仲介業者が行けば仲介手数料の分け前が増える。しかし、山越をするような業者とは仕事をしても商売にならないので、そんな噂が広がるとみんなが情報を入れてくれなくなる。)
そこで、ここには一切、登場していない私が売主のところに行くわけです。
すでに不動産屋1は消えているので、私が売主のところに行って、不動産屋Bと買主を紹介しても、不動産屋A、2,3に対して言い訳ができます。表向きの理屈ではこうなんですが、実際には不動産屋Bの担当者Gが人見知りで「こんにちは~」と売主を尋ねられないという問題もあるかもしれません。
しかし、私にとっては上手くいけば、不動産屋A、2、3の代わりに物元業者になれるわけですから話としてはおいしい訳です。上手くいけばですが・・・。(売主に会えてもこういう怪しい話はなかなか上手くいきません。)
で、行ってきました。
売主さんの名前はKさんです。
私が売主さんの家の住所を頼りに近くまで行くと、道路の掃除をしている人がいます。
私はその人に声をかけました。
「すいません。この辺にKさんという方の御宅はありませんかね?」
「ん?私がKだけど・・・」
(らっき~~~~)
事情を話すと・・・
「その物件の件は不動産屋Aに任せてるから、そこと話してくれ・・・」
(ガクッ・・・)
不動産屋Aの担当者と連絡先を教えてもらいました。
(もっとも、不動産屋Aは私も良く知っている会社でしたが・・・)
不動産屋Aの担当者と不動産屋Bの担当者を直接会わせて、私の仕事は完了です。
あとは、不動産屋AとBが上手く話を進めてくれることを祈るだけです。
この結果はまだ出てません。
物元や売主に繋がらなくて困っている方がいたらご一報頂ければ場所によってはお手伝いします。
【経緯】外伝7【立退き】
さて、昨日の話の続きです。
私はRさんとUさんの関係を聞かなくてはなりません。いくら、Uさんが連帯保証人でも、Uさんが家賃を払っていて、この部屋に住んでいるので、そこの関係だけはちゃんと確認しなければなりません。
聞くのイヤだなぁ・・・と思いつつも仕事だし・・・止むを得ず切り出しました。
「あの・・・Rさんと正式にはどんな関係はなんでしょうか・・・?」
「あ~ん?奥さんみたいなもんだって言っただろ。」
「いえ、『みたい』ではなく、『正式』にはどんな関係なんでしょうか?」
「あんたには関係ないんじゃい」
(って、「じゃい」ってどこの方言なんじゃい)
と、どうでも良いことを思いつつ・・・
「いえ、さすがにご家族や血縁でもない方にいろいろなお話をする訳にもいかない訳でして・・・」
と言うと、意外に素直に答えてくれました。
「俺はRの雇用主じゃい」
(あれ?Rさんってそう言えば職業が書いてなかったな・・・)
「あの、どういう、お仕事なんでしょうか?」
「聞きたいんかい?じゃあ、教えてやろう。Rはな、ジャパユキなんじゃい。」
「『じゃ・ぱ・ゆ・き』・・・」(懐かしい、響き・・・)
(はい、そこの貴方、『ジャパユキ』と聞いて解る方!アラフォー+αですよ)
ジャパユキが解らない方はこちらを参照してください。→『ジャパゆきさん』Wikipedia
(って・・・ぜんぜん、奥さんじゃないじゃん!)
でも関係が解れば良いだけです。だって、こちらは、これからもRさんに幸せにここに住んで頂く事が目的ではありません。立ち退いて貰うのが目的です。まぁ、一応、雇用関係ということもあるみたいですが、UさんがRさんを見捨てるとも考えにくい雇用関係だろうと思いました。だって、UさんにとってRさんは大事な稼ぎ手と思われたからです。それと、Uさんみたいな方は話が早いんです。この時は解っていなかったんですが経験を重ねるうちに住んでいる場所に愛着が無い方というのは金銭的に解決がしやすいんです。Rさんは長いこと住んでいるので愛着はあるかもしれませんがUさんがここに愛着があるとは考えにくい状況です。
しかも、Uさんは私が切り出さなくてもちゃんと解っていました。
「で、いくらくれるんじゃい」
「えっ」
「だから、立退き料、いくらくれるんじゃい」
この頃の私はまだ立ち退き初心者です。もじもじ、していると・・・
「条件は2つじゃい。Rの次の住む場所を探すことと家賃の10倍じゃい。」
(らっきーーーーー)
家賃の10倍の立退き料って高いと思うか安いと思うかはそれぞれだと思います。プロの方からすれば普通と思われるでしょうし、素人の方からすれば、高い!と思うとおもいます。もっとも月額家賃にもよりますが、今回は十分予算内でした。読者の方には立退き料の考え方が解らないと思われますのでここで立ち退き料の考え方をちょっと書いておきます。
・ 引越し代:家賃の1ヶ月分
10万円の部屋の引越し代は概ね10万円と考えます。もちろん実際にはその人の荷物の量によります。
・ 次の住まいの初期費用:家賃の6か月分
現在の住まいの家賃が10万円なのに次の住まいの家賃が30万円ということはその人の収入が突然増えるわけもないので、概ね同じぐらいの家賃と考えます。そうすると、敷金2ヶ月礼金2ヶ月(関東の場合は礼金があります。関西だと敷引きです。もちろん、物件によってはこれがゼロで済む場合もありますし、4ヶ月以上掛かる場合もありますが住居系の場合にはこれぐらいで考えておきます。)仲介手数料1ヶ月。それに火災保険だの鍵交換費用などで1ヶ月ぐらい(実際には5万ぐらいでしょうが面倒くさいので1ヶ月としちゃいます。)
・ 迷惑料:1ヶ月~
実際に、引っ越すと知り合いに住所変更のお知らせをしたり、金融機関や免許証の住所変更など、面倒な手続きがあります。その他にも最近では次の住まいでプロバイダーとの再契約やケーブルテレビの加入など人によってはやらなくてはいけないことが沢山あります。もちろん、精神的な保証という意味合いもあります。
と考えれば概ね8ヶ月ぐらいは掛かります。
しかし、住居系の賃借人は賃貸人から「老朽化の為、立て直しますから、退居してください」と言われると、借家法をよく解っていないことがあり、慌てて次の部屋を探して、出ていってくれる方もいます。私の経験から言うと3割ぐらいの方は立退き料を支払わないで済みます。また、7割以上の人が上記の内訳以内で退居してくれます。
問題は残りの3割の人です。
この人たちはかなりゴネます。不動産屋や法律関係にちょっと詳しい知り合いがいたりして入れ知恵をされると、その入れ知恵をされたところから、さらに多目に請求してきます。不動産屋や法律関係に詳しい人の場合はあまり法外なことは言ってこないことが多いです。
実際にはこちらは、全員に退居してもらわなければならないですから、なんとしても出てもらわなければなりません。実際には上記の様な理屈が通じない相手もたくさんいます。その場合は大変になります。
時々、立退きを実際にやったことの無い不動産鑑定士や弁護士が杓子定規にバカな立退き費用を算出したりしますが、私は(やれるもんなら、それでやってみろ)と思います。
さて話を戻すとRさんの場合は金銭的には十分に予算内だったわけです。(しかもSさんの立退き料ゼロだったし・・・)詳しくはこちらから
問題はRさんの次の住まい。職業(本当のことを言えるわけもない)、本当に就労ビザを持っているのか?(あとで解りますが持っていません)、フィリピン人、連帯保証人がUさん(血縁じゃない上に普通の人じゃない)
部屋を探すのは相当、大変でした。
私がなかなか部屋を探せないでいると上司が・・・
「入管行って、チクッてこい!」
この上司、意気込みで土地を買えちゃう上司(詳しくはこちら
)なんで言うことは極めて短絡的です。
・ Uさんが仮に一緒に逮捕されても、仲間になにをされるか解らない。
・ こちらが立退きを目的として居住者を入国管理局に引渡したことがマスコミにでも取り上げられたらただじゃすまない。(一応、上場会社でしたし・・・)
さすがに上司には、このことを言って理解してもらいました。
その後、3ヶ月ぐらい掛かって、なんとか部屋を見つけることができました。
このマンションは他にも立退きで苦労することはあるのですが、ネタとして話せることはこんな感じです。
ちなみにこのマンションはすでに解体されてありません。本当は再開発しようとしたのですが、更地の段階でどうしても売ってくれという不動産デベロッパーが出てきたので売却してしまいました。そのデベロッパーは既に休眠状態ですが・・・。
このテーマでのこのマンションはこれぐらいで終わりにします。
【経緯】外伝6【立退き】
今日は以前書いた、あまり話が通じないRさんの話です。
賃貸管理をしていると、色々な人や事件に遭遇します。(後日、少しずつ書いていきます。)
Rさんに至っては前のオーナーが契約したんですけど、私の本心は
「よく、この内容で契約したよな・・・」
と言うような方でした。
まずは毎度同じの契約書及び添付書類による賃借人の属性チェックです。
名前:Rさん
性別:女性
年齢:30代
同居人:無し
連帯保証人:Uさん
家賃の遅延履歴:無し
本物件他の居住者からのクレーム履歴:無し
と、ここまで読んでいる方は問題無い様に感じると思います。
しかし、私はすでに『あたた・・・っ』と思っていました。
Rさんの契約書に添付されている身分証明書はパスポートのコピー!
(国籍・・・フィリピン人じゃん!)
別にフィリピン人だから悪いというわけではありません。しかし、ここに住んで既に12年が経過しています。ビジネスでちゃんと日本に来ている方で12年も日本にいれば一般的には日本語がちゃんとしゃべれるはずです。
(日本人の方と結婚されたのかしら・・・)
と思いつつ、Rさんの部屋にも
『近所まできましたので~。』
作戦で行くと、あっさり・・・ドアが開きました。ちょっと、セクスィな格好をしていましたが、仕事モードなのでそんなことは気にせず、名刺を渡して、一気に用件を言うと、Rさんは部屋に戻っていって携帯電話を持ってきて、どこかに電話を始めました。何を言っているかは解らないのですが、時々、日本語らしき言葉も・・・どうも
「すぐにきて~」
と言っている様です。しばし、待っているとRさんはその携帯を私に渡しました。電話の相手が誰だかも解らない私は耳に当てるだけで、こちらから話すことはできませんが、私が電話を持っていることを教える意味で
「もしもし・・・・」
というと。結構、太いというかドスのきいた声で
「何の用事じゃいっだいたい、お前は誰じゃい」
(いや、じゃいじゃいって言われても、あんたこそ誰じゃい)
と言いたい気持ちを抑えて・・・勇気が無いだけですが・・・
「Rさんのお住まいのマンションの新オーナーになった会社のものです。所有者変更のご挨拶と契約書の賃貸人の部分を変更したいと思いまして、やってきました。」
と精一杯丁寧に言ったつもりでした。
「ほんまかいあんたが新オーナーの会社の社員って証明できるんか」
(って、いいから、あんたは誰なんじゃい)
と言いたいところを必死に抑えて・・・
「はい、とりあえず、今、Rさんに名刺を渡したのですが・・・」
「Rに換わってくれ」
と言われたので携帯をRさんに・・・なにやら、ひそひそ話して・・・携帯は私にまた戻ってきました。
「おう、どうやら本当みたいだな。Rじゃ話にならんから、俺が会ってやる。」
さすがに誰だか解らない人が会うと言われても・・・勇気を振り絞って
「あの・・・どちら様でしょうか・・・」
「Uだよ、U」
(あっ、たしか連帯保証人の方・・・)
会う日を約束したのですが、私はもう一つ確認しなければならないことがあります。
Uさんの身分証明書(運転免許証)のコピーは契約の時に添付されていたのですがコピーが粗い為、顔写真は確認できません。本当に会う人がUさんなのかを確認しなければなりません。
「すいませんが、本当にUさんかを確認しなければならないんで、お手数ですが身分証明書、あっ、免許証を持ってきていただけませんか?」
「ねーよ」
(無いって、契約の時には・・・)
「免許取消し中だよ」
(取消しの場合は○○中とは言わないだろ)
と心の中で突っ込みつつ・・・
「他に何か身分証明書はありませんか?例えばパスポートとか・・・」
「おう、住民票なら取ってくぞ」
(住民票取るのに身分証明書がいるだろ)
と言いたかったのですが持ってくるというので
「それで結構です。」
3日後にRさんの部屋で会うことになりました。
そして、Rさん、Uさんと会う日になりました。ちょっと、Uさんの声に萎縮していた私ですが・・・。勇気を振り絞って、会いに行きました。心の中では
(Rさんはきっと、Uさんの奥さんなんだろう)
と、思いつつ・・・。
さて、Rさんのお部屋に入るとUさんは既に待っていました。
(げっ、声のまんまの風貌・・・)
私が萎縮しているのを相手に悟られてもまずいかと思いつつ、杓子定規に名刺を出して簡単な挨拶をして、UさんにRさんとの関係を聞きました。
「失礼ですがRさんはUさんの奥さんでしょうか?」
「おう、だいたい、そんなもんじゃい」
(やっぱり、そうだったんだ。私の勘も立派じゃい)
と思いつつ次の作業に・・・
「すいませんが、住民票を見せていただいて宜しいですか?」
「おう、これじゃい」
役所の封筒に入っているままの住民票を手渡されたので早速、開けて確認すると、間違いなくUさんです。目を住民票の下の方にずらすと
妻○○(漢字)
長女○○(漢字)
長男○○(漢字)
(Uさん、今、Rさんが奥さんだって言ったじゃないですか・・・)
もう一回、関係を聞かなくてはならなくなりました。
もう、RさんとUさんの関係に気が付いている方もいらっしゃると思いますが・・・
この話は次回に続きます。
技術者~収益不動産~そして現在までの経緯3
いつの間にか、立退きの話を4日も連続で書いてしまいました。私は立退きだけで100件以上をやっています。(100件ぐらいまでは数えていますが、それ以上は数えてません。)だから、この手の話を書き出すと、いくらでも出ます。地上げも同じです。しかし、あまり、本来、伝えたいことから離れると、いつまで経っても本題に戻れなくなりそうなので、先に本題から書きます。
(立退きの話が面白いというお言葉も頂戴しましたので、さっさと本題を書いて、続きは書きます。)
さて、本題に戻ります。
「ん?画像がない」
そりゃ、テキストで如何に表現力を・・・と言い訳をしてもしょうがないので今回は画像をいれてみます。
さて、私は『Dr.相澤の住宅情報館』のプロフィールにもある様にあるハウスメーカーに務めていて、その後、その会社の収益不動産部門に移動したところまでは前回、書いた通りです。しかし、私に転機がやってきます。私はそのハウスメーカーを辞めることとなりました。辞めた理由はいくつかあります。
決定的な理由はその会社が好きだったから、今、その会社がやっている事が住宅を作り、販売をしている会社とは違う方向に向かっているからという事だったと思います。
・・・と、その辺の感情的な話は置いておいて・・・私は不動産の景気が悪くなる『金融商品取引法』改正前に、14年間勤めたハウスメーカーを辞めて、不動産証券化を取り組む会社に移りました。一応、役員待遇で移りますが、やる事は殆ど変わりません。強いて言うと、新入社員の面接をするぐらいでしょうか・・・。
しかし、程なく、景気が大きく変わります。世界的にもリーマンショックとよく言われますが、リーマンブラザーズだっていきなり、潰れたわけではありません。色々な要因が少しずつ、押し寄せていったのです。不動産業界の流れを止めたのはリーマンショックではなく、金融商品取引法の改正でした。
平成19年10月1日、この日は私は忘れることは無いでしょう。不動産流動ビジネスに関わっている人は同じだと思います。バブルの時代の人にとっては総量規制と同じぐらいショッキングな出来事でした。
(総量規制を知っている、そこの貴方は昭和の人ですよ)
これによって、日本の不動産市場は大きく変わります。予想していた通りに・・・
そして多くの不動産会社が倒産していきました。
これ、私が取引していて、金融商品取引法、改正以降、今日までに倒産(会社更生法、民事再生法を含む)した会社の方々の名刺です。当然ですが私の移った会社に影響が無いわけがありません。私が転職した会社も、その後、間もなくしておかしくなります。(景気だけのせいでもないんですが・・・)
そして、私以下、殆どの社員がその会社を後にすることになります。
そして、私は、
『本来の自分の仕事に戻ろう。』
と、考えました。
ふっと、以前に自分が運営していたサイトを思い出しました。もう、何年も更新してないのに、見ていてくれる人がいるのでしょう。アクセスカウンターだけは少しずつ動いているようです。
『サイトをリニューアルしなきゃ・・・』
と、思いました。
前にサイトを管理していたときには住宅の技術屋として、みなさんに回答していました。しかし、私は技術だけではなく、不動産屋としての一面を備えて帰ってきました。しかも、そこらの不動産屋とは違います。立退きや地上げを含めるギリギリの最前線にいた不動産屋です。Excelと睨めっこしっていただけでもないし、電話営業をしていただけでもありません。本当に人と対話をして、毎日々々、現場を歩いていた不動産屋でありデベロッパーです。
ですから、建物だけではなく土地も・・・、所有権の物件だけではなく賃貸住宅にも対応できるサイトにリニューアルしていきたいと考えています。
【経緯】外伝5【立退き】
私はここに、収益不動産の話どころか、立退きの話を書いていますが、実際には『住宅』の専門家です。しかも、住宅に関する技術系の人間です。自称ですが、ちゃんと一級建築士も持っています。(宅建他、不動産系の資格もいくつか持っていますが・・・)
私は、声を大にして言いたいんです。
私は住宅に関する技術の専門家だ!
と・・・
今日の仕事の依頼は
「相続に関する、遺産分割協議書と相続による不動産登記」
です。すでに万屋状態です。
さて、昨日の話の続きです。
なかなか会おうとしてくれない、Sさんの部屋に通うこと10回目ぐらいの時でした。
そろそろ、戦法を変えないといけないかな・・・
と、思いつつも、今日はYさんとお話しをした帰りなので、そのままSさんの部屋に立ち寄りました。呼鈴を押そうとした瞬間・・・・またもや、数人の男性です。
「この部屋の方ですか?」
と、聞かれました。さすがに2回目ともなると雰囲気で察しました。
「いえ、このマンションを所有している会社の者ですが、警察の方ですか?」
と聞き返すと、やっぱりそうでした。ドラマ通り手帳を見せられて・・・
「この部屋の方に少々、用事がありまして・・・」
(私もなんですけど・・・)と言おうとすると、
警察官の手に持っているのは家宅捜査令状です。
警察官は俺達の邪魔するなよ・・・と言わんばかりの態度です。
家宅捜査令状!
って、何したの?Sさん・・・・
というわけで、警察官は無理矢理Sさんをドア越しに呼びだし、ドアを開けさせました。私は側で見ているだけですが、黙ってみている訳にはいきません。何って言っても、このマンションのオーナーです。私だって、会社に報告しなければならない義務があります。
というわけで、警察官の最後尾から一緒に突入!
と、絶句な光景でした。
部屋には無数のパソコン。
モニターには永遠と流れる意味不明の文字・・・。
床はケーブルだらけです。
窓には真っ黒の紙が完璧に隙間なく貼られています。
警察官はSさんに何かを話していて、Sさんは観念したかの様にうなだれています。ほどなく、Sさんは警察に連れて行かれました。
そして、警察官は私に・・・
「ここにあるものは全て証拠品になりますので一切、触らないで下さい。」
『はい』で帰るわけには行きません。少なくとも、どうして、こうなったのかを会社に報告する義務がある私は、この部屋が何に使われていたのか、Sさんが何をしていたのかを聞きました。
ワンクリック詐欺の基地Sさんはその主犯
ということでした。
数日後にSさんの部屋にある殆どのものは警察が押収していきました。
私は、何もせずにSさんの立退きに成功しました。
さて、次回は言葉の通じないRさんです。
【経緯】外伝4【立退き】
不動産関係の仕事をしていると、いろいろな不動産の話があります。
たしかに以前、
『お寺を買いませんか?』
という、話がありました。しかも・・・
『宗教法人セットでしかも、檀家さん付き』
という話でした。(檀家さんの評価額なんて出せないし・・・)
他にも『医療法人付き病院』や『営業権付きホテル』などはよくあります。
当時、収益不動産を扱っていた私は『病院』や『ホテル』は検討しました。しかし、さすがに、このお寺から、どんな収益が生まれるかを思いつかなかった私はその話を断りました。まぁ、普通に違法行為ですから、そんなことを考える訳もないのですが、こういうことに頭が回る人って時々、すごいなぁと思ってしまいます。もちろん、バカだなぁとも思うのですが・・・。
『ラブホテル』というところがちょっと笑えました。
さて、昨日の話の続きです。
警察署に連れて行かれた私は、本当に建造物不法侵入をしていたわけではありません。当然ですが、そのマンションは私が所属している会社が持っているものですから・・・。そのことを警察に確認してもらって、警察には理解してもらえました。
私が逮捕された理由は想像していた通り、Yさんが鍵を開けられたことで心配になり警察に通報したということでした。
逮捕までされた私は、タダで帰るほどお人よしではありません。私のことを逮捕した警察官に私が
『新オーナーで賃貸借契約書の作成と新賃料振込先の変更に来たら、なかなか連絡がとれなくて、心配になって鍵を開けた』
ということを、私と一緒に行ってYさんに説明してくれと言いました。
さすがに自分の仕事(立退き)に警察が協力してくれるわけないかなぁ・・・と思ったら、誤認逮捕に警察官も悪いと思ったのか、それともYさんに報告する義務があったのか快く承諾してくれました。
こうやって、私は無事にYさんと面識を持つことが出来ました。
・ 電話に出なかったのは知らない電話番号には出ない。
・ ドアホンに出なかった理由はセールスだと思ったから。
・ 郵便受けは見てなかった。
ということでした。
Yさんも悪かったと思ったのか、その後は私とは色々話してくれるようになりました。元々、身寄りのいない、ご老人です。寂しかったこともあるとは思いますが、その後はYさんの方から話してくれるようになりました。
ただ、寂しかったこともあるのでしょうか、Yさんのご都合の良い時間を聞くと、朝9時と言われます。
私の用件は玄関先で済むようなことなのですが、必ず、上がっていけと言われます。そして、
『果物は食べるか?お昼ごはんは食べるか?』
と聞かれます。こちらはYさんの機嫌を損ねるわけにも行かないのでなかなか断れず、いつもYさんの家を出るのは夕方です。上司にその旨を相談すると一言・・・・
『頑張れ!別に説得できれば何時までお茶しててもいいからな。』
『あっ、残業代は無理だけど!』
(残業代はつかないんかい!!!!)
以上でした。
そして、最終的な結論としては
・ Yさんの次のお住まいを私が責任を持って探す。
・ 次のお住まいの敷金と礼金などの初期費用をこちらが負担する。
・ 引越し代をこちらが負担する。
・ いらない物を置いていっても構わない。
という条件で立ち退いてくれることになりました。
Yさんも余程、私のことが気に入ってくれたのか
『相澤さんのお仕事の邪魔にならないように、住む場所が決まったらすぐに出て行くからね。』
と言ってくれました。
しかし、問題は次の住まいです。
実はこのマンションの家賃は、周辺相場に比べるとかなり安かったんです。ですから、同じぐらいの条件の物件を見つけることができません。
それと、Yさんは身寄りがありません。つまり、連帯保証人がいません。連帯保証人のいない、80歳過ぎの老人を受け入れてくれる物件がほとんど無いという問題にぶつかります。
なんとか、同じ条件の物件を見つけ、結局は私の勤める会社が保証人になるということで決着しましたが、そこまで行き着くのに半年ぐらいの時間を要しました。
Yさんによる教訓
・家賃が周辺相場より安い場合は代替物件が見つけにくいので交渉が難しい。
・老人を受け入れてくれる賃貸住宅は少ない。
・老人は話が長い。(結構、楽しかったけど・・・)
さて、次は「忙しい!」を理由に会ってくれない方に突入です。
契約書等によると賃借人は
名前:Sさん
年齢:30歳台
性別:男性
連帯保証人:保証会社
職業:IT企業らしき会社
同居者無し
家賃支払の遅延履歴等は一切無し
本物件居住者からのクレーム等も一切無し
まずは、務めている会社をネットで調べますが出てきません。「小さい会社なのかなぁ・・・」と思いつつも、書類上は怪しい点はありません。
Sさんは電話は何度掛けてもアポイントは取れないので、直接行って、
・電気がついている。
・水道メーターや電気メーターのまわり具合
などを確認して、中に人がいることを確認した上で
『近所まで来ました~』
という古典的な方法で挑戦です。同居者もいないということなので夕方以降に行くことにしました。
しかし、この部屋は不思議でした。
電気のメーターは激しくまわっていますが、外は暗くなっている時間なのに外から見てもこの部屋は電気がついているという様子がありません。というか、昼間でも暗幕?みたないもので部屋の中が全く見えません。
『なんだろう・・・』
と思いながらしばらく、通うのですが、呼鈴には絶対に出てくれませんでした。SさんはYさんに会ったときなど週に2回ぐらいずつは尋ねました。
通い始めて、かれこれ4週間・・・そろそろ、別の手を考えないと・・・と思っていた矢先、とんでもないことが起こりました。
このとんでもない出来事は明日に続きます。
【経緯】外伝3~いきなり逮捕される~【立退き】
今日は私の会社の社員Fが自分のマンションの契約をする予定日でした。
しかし、結局、契約には至りませんでした。
部屋はすごく良い部屋で社員Fも気に入っていたのですが・・・
契約の手続きの仕方と契約書の内容に大問題があって、一応、それを訂正するように貸主と交渉したのですが貸主がそれを理解できず結局、破談となってしまいました。
賃貸住宅をやっている不動産会社のみなさん、東京ルールは守りましょう。
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/juutaku_seisaku/tintai/310-0-jyuutaku.htm
詳細については後日書きます。
さて、今日は買えてしまったマンションの立退きの話です。
皆さんは立退きというとどんなイメージをお持ちでしょうか?
きっと、こわ~いお兄さんがやってきて、怒鳴りまくるとか、
いっぱい、嫌がらせをして、そこに住めないようにするとか、そんなイメージを持っている方が多いと思います。
しかし、実際にそんな立退きをするのはバブルの時代の話で、
(その頃だってそんな立退きをする人が沢山いたわけではありません)
今はもっと紳士的に行います。
簡単に言えば『条件交渉!』これにつきます。
さて、まず買ったマンションの住人の属性をチェックすることになりました。
住人の属性のチェックとは、
簡単に言えばどんな人が住んでいるのかを調べるということです。
私はすでに、そのマンションのオーナーである会社のその物件担当ですからオーナーと概ね同じ権限を持ってます。契約書を全部見ること、その際に提出されている住民票や身分証明書のコピー、連帯保証人の身分証明書なども見ることができます。
この物件は27の賃借人がいました。
うちわけは法人3、一般で借りている方で単身者(契約時に一人で住むと言って借りた方)が18、家族で住んでいる方が6という内容でした。法人は出版関係、自動車関連、不動産関係といった感じです。個人の方の中に、ぱっと見て、これは・・・と思う方は2名いましたが、後は契約書及びその添付書類だけではわかりませんでした。
まず、立退き交渉の基本はそこを利用している(住んでいる)人と面識を持つことです。この面識の持ち方が一番、重要なんです。ここで、相手に好印象を与えることができるかどうかで交渉が上手くいくかどかが決まります。これは、立退き交渉だけではなく、すべての交渉においての基本です。
というわけで、その面識を持つための作業に入ります。
一番簡単な面識を持つ方法は、その物件の所有者が変わったという理由で
・ 家賃の振込先の変更のお知らせ
・ 賃貸借契約の作り直し
・ 新オーナーの挨拶
という理由で借主に会いに行くことです。
まずは、所有者が変わった旨のご挨拶のお手紙を出します。そこに、家賃の振込先の変更の旨を書いておきます。そして、前オーナーと連名でお手紙を出すことが重要です。前オーナーとしっかり話ができていれば、賃借人は安心します。
※実際には賃貸借契約の作り直しなどは必要はありません。また、オーナーに変わったことの承諾を賃借人に取らなければならない法的な理由もありません。前オーナーからオーナー変更のお知らせを出してもらえればそれで法的には完了です。
さて、お手紙を出したら、挨拶スタートです。当然ですが、いきなり行って、
「こんにちは~、新オーナーです。」
で、会ってくれる方は1割から2割で非常に効率が悪いので事前に電話して、アポイントを取っておきます。アポイントを取ろうとして、なかなか、会おうとしてくれない人は危険です。この段階では私は単なる新オーナーで押し売り(セールス)ではありません。
契約書や家賃の振込先変更の説明と言っているのに会いたがらないというのは、『来てもらっては困る。』なにかがあると考えて良いでしょう。この『危険な賃借人』から、交渉に入ります。なぜなら、こういう方は会うのも交渉するのも時間が掛かるので最後まで残ってしまうからです。
私の目的は再開発ですから、全員に出て行ってもらわなければならないので、どんなに他の方を早く立ち退いてもらっても、1人に居座られたらおしまいです。ですから、危険な人から交渉するわけです。
もっとも、このマンションで会いたがらない人は4人しかいませんでした。私は立退き交渉はこの時が初めてですから、それが多いのか少ないのかは解らなかったのですが、後にこれは約1割で少ない方だということが解ります。
その内、1名の方は会いたがらない理由が明確でした。
それは不動産関係の方で、契約書の新作成などが不要であることをちゃんと理解しているからでした。しかし、こういう方は話が早いです。我々のこの物件の購入した意図を正直に話して、後は立退き料の話ですが、相場をちゃんと知っていますから、大幅に値切ることもできませんが、無茶なことも言ってきません。
問題はあとの3名です。
1名は電話を何回しても出ません。
1名はなぜか、いつ電話してもいるんですが、忙しいからと言って会ってくれません。
そして、もう1名は・・・電話には出ますが、言葉が通じません。
相手が何を言っているかも、私が殆ど理解できません。
(私は義務教育レベルの英語と日本語が理解できるだけです。)
契約書にはカタカナで名前が書いてありました。しかし、この方は必ずしも会いたがらないわけではなく、言葉が通じなくてアポイントが取れないだけなので、後回しにします。
まずはこの電話にぜんぜん、出てくれない人から交渉開始です。
と、自分の中で勝手に決定しても電話には出てくれないのでアポイントは取れません。
さて契約書をチェックすると名前はYさん、年齢は・・・っと
80歳を超えています!
仕事は無し・・・
一人暮らし・・・
なんとなく不安になりながらも、とりあえずアポイントが取れないので現地に向かいます。メールボックスを確認すると、特に郵便類が溜まっている様子はありません。ということはメールボックスは誰かが確認している可能性が高いと思い、今度はお部屋まで行って、呼鈴を鳴らすも全く反応はありません。
(居ないのかな?)
と思いつつもドアに耳をあててみると、テレビの音声と思われるものが聞こえます。しかし、呼鈴を鳴らしても出ないので、その日は帰ることにしました。
さて、翌日です。
私は諦めるわけにもいかないので、この日もやってきました。
呼鈴の反応は相変わらずありません。しかし、この日もテレビの音声は聞こえます。この事態は当然、想像ができたので、手紙をもってきました。
『新オーナーで挨拶に来ましたが、電話も呼鈴も応答がありません。しかし、テレビの音声が聞こえるので中にいらっしゃると思うのですが、もし、倒れていて動けないなどのことがあったら心配ですから明日は合鍵で開錠します。』
という内容です。
手紙を玄関についている郵便受けに入れて、この日は帰りました。
さて、翌日・・・
相変わらず電話は出ません。
呼鈴を鳴らすも反応は無し・・・。
テレビの音声は聞こえます。
ここで、自分の中では本当に手紙に書いた事態が心配になってきました。
一応、ドア越しに
「鍵を開けますよ~~~~」
と何度か言って、合鍵で鍵を開けました。
(チェーンが掛かってる!!!中には誰か居るってことじゃないか!!!)
もう、頭の中ではYさんがテレビの前で倒れている姿しかありません。
私は必死に少しだけ開いている玄関から、
「Yさん、Yさん」
と叫びました。
開錠してから、10分ぐらいがたったでしょうか・・・
まだ、玄関越しに名前を呼んでいると、誰かが私の肩を叩きました。
振り返ると、ちょっとルーズな背広を着た男性が2名。私が何も言う前にそのうちの一人が
「建造物不法侵入の現行犯で逮捕します。」
「えっ・・・」
一生懸命に事態を説明したのですが
「詳しい話は警察署で聞きますから・・・」
の一点張り。
私はそのまま、パトカーに乗せられて警察署に連れて行かれました。
立退き1件目でいきなり逮捕された立退き屋さんとなってしまいました。
続く・・・
【経緯】外伝2【立退き】
さて、前回の続きです。
そのマンションの購入申込をしてしまったのですが、
買わないで済むチャンスが直前にありました。
ここまでの間に売主と私は何度か打合せを行っていました。
その物件の境界確認は売主が完了して、実測を行った上での売買ということでした。
※これを実測売買と言います。実測を行わないで登記簿の面積で行う売買のことを公簿売買と言います。
この境界確定が行われてない状態で不動産を買ってしまうと大きなトラブルが発生します。
例えば、境界付近に塀があったとします。
その塀は自分の物のつもりだったのが、実際に境界を確定したら
『相手の土地と自分の土地の間にまたがっていた。』
自分としてはそこに綺麗なオフィスビルを作りたいからその塀を作り直したいけど、所有権が明確にならなくなっているので作り直せない・・・
そして、境界が確定しないので土地の面積も確定しないから建物を作るのにも困るし、次の売却の時も買い手が付かない。
という事態が発生します。
そして、この様なことは信じがたい話ですが良くあることなんです。
本題に戻りますが、契約前日になって、隣地の一箇所の境界が確定していませんでした。
理由は隣地の所有者と連絡が取れないという問題です。
隣地は借地で所有者がその場にいなくて連絡が取れなかったのです。
私はN氏に『境界が確定しないと、当然、社内の承諾は取れない』ということを伝えます。
N氏はもう、必死です。
契約前日の夜11時を過ぎた段階で私はこの契約を断念しようということをN氏に伝えたのですがN氏は諦めません。
「契約までに境界を確定すれば問題ないわけですよね!。私が今から隣地所有者のところに行って押印してもらってきます!。」
(この仕事は売主の仕事でN氏の仕事ではありません。)
私は絶対に無理だと思いながらもN氏からの連絡を待ちます。
ついに午前0時をまわって、契約当日に突入。
午前2時ぐらいに携帯が鳴りました。N氏からです。
「隣地所有者のところに来ているんですが呼鈴鳴らしても出てきません。」
私は一言・・・
「当たり前だろ・・・。」
さて、朝になって、その旨を上司に報告しました。
契約日になって境界が確定していないで契約が流れる・・・
怒られるだろうなぁ・・・と思いながら報告しました。
すると上司は・・・
「N氏の意気込みを買った!
契約後にN氏と協力して境界を確定しろ!」
と言い出しました。
(おいおい、5億からの取引なのに意気込みでいいのか・・・)
と思いつつも、上司が良いというので当時の私もよく解っていなかったのであえて反論もしませんでした。
今考えれば、上司も上司で、境界確定の重要性が解ってなかっただけの話です。しかし、その物件はこうやって無事に買えることとなってしまいました。
さて、次回からは購入後の立退きの話を書きます。